とき川の小物屋さん

自然の残る埼玉県ときがわ町で、おいしい水出しコーヒーをお出ししている小物屋さんです。

 

とき川の小物屋さん

~雨が降ったらお休みで 営業時間は日暮れまで~
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創作民話 夕やけ小太郎

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その1~雲になった小太郎

の ふもとの村に 小太郎という子が おった。
いつも 山に入っては 花や虫を じーっと見ているような やさしい子だった。
そして 晴れた日の夕方は きまって家の前の 川のほとりにすわって
お日さまがしずむ 西の山を見ていた。

  「あの山の向こうには 何があるんだべ
   おらの山の花とは ちがう花があるんかな…
   夕やけ色の虫が いるんだべか」

そしてお日さまが山にしずむと家に入って
  「おかー あしたは晴れじゃ」
  「どうしてそんなことが わかる」
  「わからん でも はぐれ雲が 西の山の上に おったから…」
ふしぎと 小太郎がそういった次の日は かならず晴れた。
村の人たちも いつのまにか「夕やけ小太郎」と よぶようになった。

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やけ小太郎も二十才になり 石ころだらけの畑を田んぼにしようと
くらくなるまで はたらいた。
おとーも おかーも 大助かりだった。
でも 夕やけのきれいな日は いつも家のまえの
川のほとりにすわって 夕日を見ていた。

  「あの山のむこうになにがあるんだべ…」

西の山の上には ぽっかりと みかん色のはぐれ雲が うかんでいた。

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る日小太郎は
  「おとー おかー おら あの山のむこうにいってくる なにがあるか見てくる」
おとーも おかーも おどろいて
  「なにいってんだ そんなこといってねーで ヨメもらうこと 考えろ」
小太郎は それでも
  「山からかえってきたら ヨメもらう
   とにかく 山の向こうへ いってみる」
翌朝はやくに おかーのにぎりめし持って 小太郎はでていった。

ふつ日たち みっ日たち ひと月たっても 小太郎はかえってこなかった。
西の山のひとが 村をとおったときに
おとーと おかーは 小太郎のことをたずねた。
そのひとは「しばらくまえに 山の上へのぼっていく若者がいた」と おしえてくれた。
そして その日は 山の上に みかん色のはぐれ雲が ぽっかりと うかんでいたそうな。

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年がすぎ 村の人たちは口々に「小太郎は雲になった」とか
「山の向こうでヨメもろた」とか うわさするようになった。
それからというもの 夕方 西の山の上に みかん色のはぐれ雲が ぽっかりうかぶと
「ほーれ また小太郎が西の山で遊んどる 明日は晴れじゃ」と いうようになり
こどもたちも 小太郎のことをうたいながら 家へかえるようになった。

その2~ハギシリ長者

の晴れた日の夕方 東の山をこえて
ひとりの若者が この村にやってきた。
野良着にすげ笠をかぶり 腰には袋をさげており
とても旅人とは思えないような姿の その若者は
なぜか ニコニコと村の中を見て歩いた。
山の上に ぽっかりと浮かんだ みかん色の雲を見ながら
村の中ほどまで来たとき 畑で しゃがみ込んでいる年寄りを
みつけ やさしく声をかけた。
  「じっちゃん どうした」
年寄りは若者の顔を見て
  「腰が抜けて 立てねー」
  「ならば おらがおぶってやる」
そう言って若者は年寄りをおぶって
すこし高いところにある家まで送りとどけた。

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にいたばっちゃんはおどろいたが まずはお礼だと言って
お茶や煮物やふかし芋を 出してくれた。
おなかをすかしているとみえて 良く食べた。
若者は小太郎といい 遠くはなれた東の村から
この村を見に来たという。
茶を飲みながら あれやこれやと話しているうちに
あたりは すっかり暗くなってしまい
  「日も暮れたし 世話になったから今夜はとまってけ」と
ばっちゃんにすすめられ 小太郎も
  「ならば…」と言って その晩は納屋にとめてもらった。

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く朝 ばっちゃんが納屋に行ってみると 小太郎の姿が見えない。。
おもてへ出て 下の畑を見ると きのう じっちゃんが
腰を抜かしていた畑を 耕していた。
クワのふるい方も上手で はたらき者に見えた。
ばっちゃんがつくった朝メシを食べると また すぐに畑にもどり 耕した。
昼メシも食べ 夕方になると クワやスキを川できれいに洗って納屋に入れた。
そのはたらきぶりを見ていたばっちゃんが 小太郎に言った。
  「もし 先をいそがねんなら じっちゃんの腰がなおるまで
   手伝ってくれんだろうか」
小太郎も
  「この村が気に入った。しばらく世話になる」と言った。

十日たち 二十日たち あっという間にひと月がたった。
そのころには小太郎も評判となり
  「あんなに よーはたらく者はおらん」
  「ハギシリしてやっとるぞ」と 言われるようになった。
ある日 じっちゃんが小太郎に言った。
  「腰も良くなった。あしたからあそこを耕すといい」と言ってすこし先の平らになった草地を指さした。
  「あそこはその昔大きな屋敷があったんだが、今はだれもおらん。
   何か植えるといい」と言ってくれた。
ばっちゃんも「そーだいねー」と言ってすすめてくれた。

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い間 ほったらかしになっていた屋敷のあとは 草がぼうぼう。
ひと月かかって やっと草刈が終わると 最初に刈ったところには
もう スギナが生えていた。
くる日もくる日も小太郎は スギナの根っこ取りをやった。
やってもやってもスギナは出てきた。
見ていられなくなって ばっちゃんが言った。
  「スギナとドクダミの根っこは地獄の底まで続いている。
   もうヤメロ」
でも小太郎はハギシリしてがんばった。
ハギシリして耕している小太郎を見て村の人たちは
「ハギシリ小太郎」と わらった。
小太郎は耕すはたから大豆をまいた。
スギナの根っこを抜いては大豆をまき 他の畑にもまいた。

馬を飼っている家から 馬のフンをもらい
コヤシにして大切に 育てた。
大豆はスクスクと育ち プクプクの実をたくさんつけた。

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の終わりの頃 小太郎が できた豆をより分けていると ばっちゃんが
  「こりゃーいい大豆だ。ミソにするから少し分けてくれ」
小太郎はその豆を豆腐にして、世話になった村の人たちに分けてやった。
それはそれは おいしい豆腐だった。
豆腐の評判を聞いて 村の人はもちろん となりの村からも そのとなりの村からも
大ぜいの人が小太郎の豆腐を買いに来た。
ばっちゃんにおそわってミソも作った。醤油も作った。
作っても作っても売り切れた。

太郎は家を建てた。
そしてばっちゃんの世話で
コロコロとよくはたらく
この村のタエという娘をヨメにもらった。
タエはよく気のきくヨメで 豆腐を買いにきた人に
「ほんのお礼です」と言って 大豆を少しずつ分けてあげた。

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それがまた評判になり ますます豆腐やミソを買いに来る人がふえた。
小太郎は家を大きくして、東の村からおとーもおかーも呼び
世話になったじっちゃんもばっちゃんも タエといっしょに よくめんどうを見た。

れた日の夕方 川のほとりにすわって
山の上に ぽっかりと浮かんだみかん色の雲を見ている小太郎とタエを
村の人たちは

「ハギシリ長者が雲を見とる。あしたは晴れじゃ」と言うようになったそうだ。

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