ピリリリリリ・・・
シュッパーッ 進行ォー!
動き出した。
都幾川をさかのぼる憧れの鉄道に いささか興奮ぎみだ。
JR八高線の明覚という駅を出て すぐにポイントを右に切れ、まばらな集落のなかを、ゆっくりと山に向かう。
車内は行楽客とおぼしきグループと地元の年寄りが数人、なにやら声高に話しているが、今のわたしには さほど気にならない。窓から吹き込む風が あまりにも気持ち良いせいだろう。
山裾が急に近く見えたかと思うと、ほどなく最初の停車場「三波渓谷駅」に到着した。
乗客はわたしを含めて ほとんどがここで降り、小さな釣り橋を渡って対岸の温泉に行くようだ。
それにしても なんともレトロな、というより懐かしい木造駅舎だろうか。「ポッポ屋」という映画に出てきた駅舎そのままの風情があり、駅弁も高倉健のような駅員が売っているのだろうか。
この先、「蛍」という駅からは勾配がきつくなるため、アプト式のレールを使い天文台まで行き、そこで台車を切り離し、飛行船で吊って空へ向かうという。 夢の中の鉄道。